若者と社会 格差社会の克服へ(1) - 聖教新聞 体験談そのほか気になる記事

若者と社会 格差社会の克服へ(1)

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グルーバルウオッチ 若者と社会
 −世界を見つめてー

 インタビュー 経済学者 橘木 俊詔さん

格差社会の克服へ(1)


   ……グルーバル経済が浸透し、格差社会が広がる今、多くの若者が困難な
労働環境や家庭環境などに置かれ、社会との向き合い方に迷い、孤立し
がちな状況にある。
未来に不安を感じ、希望を見いだせない若者の現状について、格差社会論
の第一人者である橘木さんはどう見ているのだろうか。

 
 格差拡大の中で若い世代は多くの困難に直面してきました。長引く
経済不況で高い失業率が続き、非正規雇用が拡大する中、働いても貧困に
陥るワーキングプアが爆発的に増加しました。また最近、働き口は増えて
きたようですが、劣悪な労働条件を強いるブラック企業や、過労死に
至るほどの長時間労働など、今も多くの労働を巡る課題が山積しています。

 また近年、家族の絆が希薄化し、離婚率が高くなっている中で、
ひとり親家庭や単身世帯の多くが、貧困状態にあります。幼児虐待や
育児放棄など痛ましい事件も起きている。


また、貧困に直面した若者ほど家庭を持つことに自信が持てず、結婚願望
がない男女が急増しており、ますます孤立しがちな状況があります。

 かつての日本社会は、皆が物質的な豊かさを求めて猛烈に働き、高い
経済成長と生活満足度を実現してきました。その背景には、若い労働者を
安定して雇用し、福利厚生で支え続けた強い企業の存在があり、また
貧しくとも共に助け合って若者・子どもを育てていこうという家族・親族
の強い絆がありましたあ。

 しかしその後、長い経済不況と低成長の時代に入る中で、企業や家族に
かつてのような強い力を求めたり、若い人を支える責任を押し付けたり
することはできなくなってきています。

 今、重要なのは、政府や行政による福祉政策を軸としながら、社会全体
で若者や格差に苦しむ人を支え、助け合う共生社会をつくっていくこと
です。

 また同時に、価値観が多様化する中で、単に物質的な豊かさだけでは
なく、心の豊かさを重視する「新しい幸福感」を社会に広げていくことが
重要です。


……若者の中には、やりたい仕事が見つからないなど、「働くこと」の
意味を求めるあまり、現実の行動を起こせていない人がいるように感じる。


 伝統的に日本で語られてきたのは、働く意義を考えることがまず大切で
あり、働くことで」人生が充実し、生きる喜びを感じられるというような
思想です。

 しかし現実に、働くことに楽しさと生きがいを感じるような職に就ける
人はかなり少数派であり、大多数の人にとっては「働くことはつらく
苦しい」しかし「食べるためには働かざるを得ない」のが実際ではないかと
私は思います。

 ドイツ生まれの政治哲学者のハンナ・アーレントは、「労働」(LABOR)
とは生命の維持のための行為であり、人間が生きるためのする消費行動の
糧を得る手段であって、通常は苦痛を伴うものと指摘しています。

その一方で、製作を伴う「仕事」(WORK)を、人工的な世界を作り出す
ものとして区別し、消費財の購入のためだけに働いている現代は「労働者
の社会」だと言っています。

 このアーレントの考えを発展させたドミニク・メーダは、人間社会が
生活・生命を維持するための労働のみに時間を奪われていることを嘆き、
労働に自己実現を求めることは不可能で、労働以外の活動に求めるのが
自然であると主張しました。

 私はこの二人の考えに共感します。働くことの意義を考えるなら、
生活や家族を養うのに必要な収入・所得を得るためだけでも十分であって、
労働を通して人生を充実させるというような考えは、必ずしも必要では
ないと考えます。

むしろ働くことに意義を持たせ過ぎると、うまく働けない時に、自分の
人生までも否定しかねません。

 実際に、「生活の中でいつ充実感を感じるか」を聞いている内閣府の
「国民生活に関する世論調査」(図)があります。そこでは一貫して
「家族団らんの時」が1位で、かつては僅差の2位に「仕事にうちこんでいる
時」が付けていましたが、近年では5位に落ち込んでいます。

 ここで重要なのは仕事以外の余暇であって、「友人や知人と会合、雑談」
「趣味やスポーツに熱中」「ゆったりと休養」といったことが充実感に
つながっており、さらに「勉強や教養」「社会奉仕や社会活動」も大切な
要素になってきています。

 もちろん、働きたい人は誰でも働けるだけの仕事が社会にあることが
重要な前提にになりますが、仕事については、ある程度必要な収入を
得られればそれで十分と割り切り、仕事以外のところで人生を充実させ
ていく発想も大切です。

昨今、「ワークライフバランス」が強調されるように、仕事と家庭・
人生をバランスよく充実させることが重要になっているのです。

 次回につづく

 【聖教新聞 2017/06/10(土)】

 まとめ 
若者と社会 格差社会の克服へ(1)
若者と社会「新しい幸福感」への転換が必要(2)

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posted by mity504 at 12:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | グローバル ウオッチ
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