若者と社会「新しい幸福感」への転換が必要(2) - 聖教新聞 体験談そのほか気になる記事

若者と社会「新しい幸福感」への転換が必要(2)

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グルーバルウオッチ 若者と社会(2)
 世界を見つめて
 
 物質的豊かさから精神的充実へ
「新しい幸福感」への転換が必要


……人生の充実感を得る上で「家族の団らん」が大きな役割を果たして
いることは重要だが、現実はそういった「団らんが持てない家族」が
増えていることが問題だといえる。

 そもそも全体的に、個人主義が徹底された社会になってきて、人との
付き合いや助け合いといった関係が面倒であり、好きではないという
人が増えてきています。

その中で、高い離婚率や若者の結婚願望の低下など、家族の絆が希薄化
しているのは現実であり、それ自体をダメだと批判したり、否定しても
意味がありません。

 むしろここで重要なのは、経済的な貧困や劣悪な労働環境などの問題
から、結婚したくてもできない若者や、「団らんのある家庭」をつくり
たくても、つくれずに孤立している家族が増えているということです。

特に、ひとり親家庭の相対的貧困率は5割を超えており、子どもが十分な
教育を受けられずに、将来にわたって貧困が連鎖しかねない事態は大変に
深刻です。

 これまでの日本社会は自己責任の考えが強く、子どもの教育は家族に
責任と負担を押し付けてきました。GDP(国内総生産)に占める「教育
への公的支出」の割合が先進国の中で最低レベルであるというショック
な数字は、日本が子どもの教育を家族に依存しってきたことを
物語っています。

 しかし今や、家族だけでは子どもの教育の機会均等を支えることが
出来なくなっていることは間違いない。ならば政府や行政による福祉を
軸として、社会全体で困難な状況にある家族を守りながら、未来ある
子どもの教育を支えていかなくてはいけないと思います。

 また、若い学生・社会人への技能教育・職業訓練についても同じこと
がいえます。かつての企業は、安定した長期雇用の中で若い社員の技能
教育をする役割を果たしてきましたが、今は余裕がなく、即戦力になる
人ばかりを雇用する傾向にあります。

 現在、世界で最も幸福度が高いといわれるデンマークをはじめ、
北欧諸国やドイツなどでは、学生に対する技能教育や、社会人になって
からの職業訓練の機会が十分に広がっています。

 これからの日本社会も、子どもや若者への教育・技能訓練に関わる
政策などを充実させ、一人一人の労働生産性を向上させながら、個人の
幸福度と経済成長をバランスよく両立させる、新しい福祉国家へと
進んでいく必要があると考えます。

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 物質的豊かさから精神的充実へ
「新しい幸福感」への転換が必要



……急速に少子高齢化が進み、人口減少社会に突入した日本は、かつて
のような経済成長を望めないといわれる。その中でこれからの若い世代
が未来へ希望を持って進むために、どんな視点が必要だろうか。


 経済学では、経済成長のないゼロ成長に近い状態を「定常状態(経済)
」と呼びますが、これを19世紀に指摘したのがジョン・スチュアート・
ミルです。

 ミルは地球上で開墾できる土地が有限であることに注目し、農業や
工業における生産の成長にも制約がある以上、経済は定常状態に向かうと
示しました。

 このミルの思想は、その後の経済成長一辺倒の世界にあって重視される
ことはなかったのですが、20世紀、人類の生存そのものを脅かす地球環境
問題に直面して以来、あらためて注目されてきたといえます。

 つまり、有限な地球環境の中で生きる人類には、際限なき経済成長は
許されず、持続可能な経済成長の中で生きていくことが必要不可欠だと
いえます。

 ましてや人口減少が続く日本で、高い経済成長を実現するのは現実的
ではなく、地球の資源・環境を考えれば決して望ましいことでもあり
ません。

 過去の「国民生活に関する世論調査」などの結果からも、経済成長率
が向上したからといって、人生の充実感や幸福度が増すとは限らないこ
とが分かっています。

 そういった意味では、一人一人が、経済成長や物質的な豊かさだけから
幸福感を得るのではなく、精神的な充実や心の豊かさから幸福を実感で
きる「新しい幸福観」を持っていくことが、重要になってきているのでは
ないでしょうか。

 アジアの発展途上国ブータンは、経済的には決して豊かではありません
が国民の幸福度が高い国として知られています。

 一般的な経済指標であるGNP(国民総生産)とは別に、経済以外の要素を
入れたGNH(国民総幸福)という独自の指標をもとに、幸福度を高めてきた
といわれます。

 それが実現できた背景には、国民の多くが、チベット系の仏教を信仰し
ており、高い所得や華美な消費を追求することよりも、家族や地域との
結び付きや支え合いの中で、安心感を得ることを重視する考えがあると
されます。

 もちろん宗教であれば何でもよいということではありませんが、やはり
善い宗教を信じることは、精神的な幸福を得るために大切だと私は
思います。

 特に、経済の拡大成長期から定常期へと移行していく時代には、有限な
地球資源や環境への配慮、他者と助け合う共生・共存の精神など、
「幸福とは何か」について、人類が思想的に成長・飛躍していくことが
必要になってきます。

 新しい幸福観を支えていく上で、思想・宗教が果たす役割は大きいと
考えます。


 たちばなき としあき 1943年、兵庫県生まれ、京都大学教授、
同志社大学教授を経て、現在、京都大学名誉教授、京都女子大学
客員教授。労働経済学、公共経済学を専門としながら、格差社会論や
労働問題の第一人者として社会に有意な発信を続けている。著書に
『格差社会』『「幸せ」の経済学』『新しい幸福論』『脱「成長」戦略』
(広井義典良典氏との共著)など多数。

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メール :g-w@seikyo-np.jp
ファクス:03-5360-9613

 おわり  聖教新聞 2017/06/10(土)】

 まとめ 
若者と社会 格差社会の克服へ(1)
若者と社会「新しい幸福感」への転換が必要(2)

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posted by mity504 at 17:49 | Comment(0) | TrackBack(0) | グローバル ウオッチ
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